Criminal



「んーにゃ、知ってるモンね。不二って授業中とかいっつものこと見てるっ」

得意気に英二が言った。「俺ってば後ろの席だから良く見えるんだぜ」と付け加えて。

その言葉に、はより一層顔を赤くして絶句した。

そしてチラリ、と不二のほうを見た…。胸がドキドキ言っている。

そんなにはお構いなしに、英二は続ける。

「あ!もしや不二のか・た・お・も・い〜??」

「英二、明日提出の数学の課題、終わってないよね?自分で頑張れるよね?」

間髪入れずに周助は英二に切り返した。

「うげっ!!」

そして青ざめている英二を無視して席を立つ。

「不二〜〜、ゴメンってば〜〜!!」

英二は慌てて縋り付くように不二の後を追う。


(不二のにゃろう〜!知ってるんだぞ、そーやってムキになって怒る時程図星ってこと!)

(ついでにこれも知ってるんだぞ、も教室からテニスコートの不二を見てるってこと!)


「あ。」

教室を出ていくとき、不二はくるっと振りかえった。

そして、まだ赤くなって硬直して何かぶつぶつ言っているに声をかける。

さん。」

「・・・・・・。あっ!!はいぃっ!!?」

思わず素っ頓狂な声をあげてしまったはこれ以上に無いくらい赤くなって、

手に持っていた参考書で顔を覆った。

「やっぱり面白いね、さん。 それでね、さっきの話なんだけど」

お!?と英二が耳をそばだてる。

「良かったら今日の帰りうちに寄っていかない?」

「「はぁ!?」」

と英二は同時に声をあげた。 周りのクラスメイトも何事かとこちらを見やる。

「だから、テスト範囲。さん授業中いつも寝てるでしょ。わからないところ、教えるから。」

「え、あ…、うん!お、お願いします!」

「じゃ、部活終わるまで待っててね。」

周助はそう言うと、もう一度にっこり微笑んで教室を出て行った。

思わずは頷いてしまったけれど、後からそれを大後悔した。


――ただでさえ周助との噂が飛び交っているのに、公衆の面前で誘いを受けてしまった…。


(そ、そりゃ別に、私たち友達だし、やましいことしようってんじゃないし…)

言い訳のようにブツブツと呟いてみたけど、何故か胸の鼓動が早かった。

「ただの勉強会よっ。なんでドキドキしてるの!」

言い聞かせるように小さく言ってみた。

「それはが不二のことを好きだから〜〜〜」

ぬーっと英二が現われた。

「きゃっ!!?菊丸君!!不二君と行ったんじゃないの?」

心臓が飛び出るほど驚いたといわんばかりに、は左胸を両手で抑え付けている。

、不二はああ見えてもオオカミなんだよ??好きな子を家に連れこんで…むぐぐ!」

指で目尻を引っぱりあげて、”開眼モード”の周助の真似をする英二の口を塞ぐ。

「な、何言ってるのよ!不二君と私は仲の良い友達!それ以上でも以下でもないの!」

「いい加減認めたら?」

の手を口から剥がしながら、英二が言った。

「え?」

「見てれば良くわかるんだよん。」

それ以上何も言わず、英二は席を立った。

ウインクだけを残して。



そして、放課後。



「どーしよう…。いや、どーしようも無いんだけど」

昼休みに英二が言っていた言葉が気にかかる。

(不二君が、私のことを好きだなんて…それに認めろって、何を)

確かに、は周助を意識してしまうことが時々あるのを自覚していた。

でもそれは、周助がカッコイイから、それだけだと思っていた。

(誰だって男のコが近くにいればドキドキしちゃうよね?)

周助に対して、それ以上の気持ちを持っているのをは自分で気付いていないのだ。

火照る顔を冷たい机に押し付けるように、は突っ伏した。


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