Criminal



昼休み。



「ね、不二君。聞いてるの?」

大きな目をくるくるさせて、が周助の顔をじーっと見つめている。

「あ、ゴメン。なんだっけ?」

もちろん周助はの話をちゃんと聞いていたのだが、わざとそうやって聞き返したのだ。

するとは頬を膨らませて、むーっと唸る。 彼はその反応におもしろがってアハハと笑う。


周助はこうやってしょっちゅう彼女をおもちゃにして遊んでいるわけだが、

のほうはそれに気付くはずもなく。

「本当、さんは面白いなぁ」

「えっ、私何か面白いことした?」

きょとんとするに、周助は優しく微笑んだ。

けれど別に周助とは恋人同士という関係では無い。 ただのクラスメイト―――


「あのね、もうすぐ実力テストあるでしょ? だから、範囲確認したいのっ」

たっぷり五教科分の参考書を両腕に抱えたまま、が言った。


と周助は二年生の時に同じクラスになって、たまたま席が隣同士になった。

それ以来仲が良くなって、こうやって話したりじゃれあったりしている。


「もうすぐって、もう一週間無いんじゃない?」

そう言うと、周助は携帯のスケジュール表をほら、と差し出した。

「えーーー!!嘘!!まだ二週間はあると思ってたのに!」

「うん、嘘」

鸚鵡返しに周助はあっさり答えた。

そのセリフに、は一瞬わけがわからなかったが…すぐに顔を赤くして周助に言い返す。

「もーー!!不二君!もしかして私をからかってるわけ〜!?」

彼女の今更の抗議に、周助は思わず肩を揺らせて笑いを堪えた。

おかしすぎて涙まで滲む始末だ。

はそれがまた気に食わなくて、参考書で机をバシバシ叩いて怒る。

それでもしばらく不二の笑いはおさまらなくて、は「もう知らない!」とそっぽを向いた。


傍から見ればまるっきり恋人同士にしか見えない。

容姿端麗の不二周助。可愛らしくて明るい

二人とも学校の中ではかなりもてるし (は自覚していないが)、お似合いだと噂だ。

仮にこの二人が付合っていたとしても決して不思議では無いのだけれど、

本人たちは口を揃えて「ただの友達」としか言わないのである。

確かに周助とは「ただの友達」―――


「ひゅ〜〜♪今日もお熱いね〜〜♪」

人なつっこい声で二人の机の前に椅子をずり寄せてきたのは菊丸英二だった。

なんの話してるの?という目でかわるがわる二人を見つめる。

「ちょっ、き、菊丸君、だから私たちただの友達だってば!!」

少し顔を赤らめてが言う。

この手の冷かしなんてしょっちゅうなのだが、はいちいちムキになって反論する。

それが噂を助長させてるというのに。


(ただの友達、ね)

周助はフウ、と溜息をついた。



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